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2019/05/30 17:25


釣りをしてると、時に自分がコントロール出来ない程手足が震えて仕方ない時がある。
この一尾との出会いはまたその特別な瞬間だった。





2月の末からやっと雨季らしい天気になってきた。

正直9年前の半分も降らない程度の雨だったが、それでも澱んだ川が息を吹き返すのには十分な量だった。

この所僕は引っ越しや転職で中々バタバタして数日釣りが出来ない日が続いていた。

この絶好のタイミングに動けない事がもどかしくて仕方なかったが、3月3日少し時間が出来たので小雨が降る中自転車を漕いだ。





向かった先はこの川でも恐らく一番有名なポイント。

こっちでは雨の後釣れる事は常識だったから、普段ならするっと入れる場所でも中々の数の釣り人がひしめき合っていた。

超一級ポイントは占拠されていたので、少し離れた所に立ち釣りを始める。





バラマンディはこれまでも沢山釣ってきた。

だけどその多くは雨季とあまり関係無い時に殆どトップウォーターで遊んだもの。

雨季の後は専らシャッドやミノーの釣りが多かったから、はっきり言って状況が良いのはわかっていたがいまいちこの流れの攻略の仕方が掴めずに居た。

立ち位置的に、堰の上から真っ直ぐ上流に投げる事しか出来なかったこの時、ミノーやトップは殆どアクションせず使い物にならなかった。

だから、まだ使いこなせてるとは言えないエアオグルを流していった。





何度も投げたけど、一度アタリかティラピアのスレかどうかわからない微妙な反応があっただけだった。

周りも、泳がせ釣りを含め竿を曲げる者は一人も居なかった。

だったらと、ボックスに一つだけ入れていたビッグベイト、エバーグリーン・エスフラットを投げてナチュラルに流してみた。


昔趣味でアワビを貼り付けたものを一つこちらにも持ってきていたのだ。

実はこの時僕の中でバラマンディにビッグベイトがどれだけ効くか半信半疑だったのだ。

その僅か2投目だった。

ラインを張らず緩めずでリトリーブしていたところ、急に大きく糸ふけが出る。

そして次の瞬間・・・


「ギュンッッ‼‼キュキュキュキュキュー‼‼ドッバーンッ‼」


一瞬の出来事だった。

糸ふけを回収しようとした瞬間、魚が反転&猛ダッシュ。

強めに締めたドラグは一瞬で突破され、龍の如く巨体を宙に舞わせた。

そしてあまりの鰓アライの衝撃でラインは呆気なく切れてしまった。

餌釣りでは150℔まで躊躇なく使える様になっていたと言うのにこの時使ったラインは50℔。

なめ過ぎだ。





あまり顔には出さなかったが、心臓が破裂しそうなくらい脈打っていた。

そして悔しさと同時にこみ上げる罪悪感。

ビッグベイトなど口に残ればほぼ確実にあのバラは死ぬ。

自分のタックルの浅はかさを思い知らされ、ラインを結びなおす事はせずトボトボと帰路についた。

自転車を漕ぐ足が鉛の様に重かった。





だけどやるべき事が見えた。

同じ失敗は二度としたくないから、家に帰って夢中で仕掛けを組みなおした。

この時から僕のバラマンディ狙いのルアータックルのリーダーは80℔ベースとなる。(スピニングは例外)

そして、大型に的を絞る時はスナップをやめソリッドリングとスプリットリングで繋ぐ。

ボックスにはジョイクロ含め大きめのルアーを中心に組み立てた。



今夜仕事が終わったら仕留めに行こう。





また僕は同じ道を汗だくになりながら自転車を漕いだ。

ポイントまで片道1時間程、休む事無く全力で漕ぎ進んだ。

そして昨日と同じポイントに立った。

既に手が震えていたが、集中してキャストを始めた。





だが5時間投げたが全くの無反応だった。

この日も釣り人が入れ替わり立ち代わりしている。

プレッシャーは相当なものだろう。

だけどそれ以上に気になることが一つ、流れがかなり緩くなってしまっていたのだ。

雨が暫く止んでいたので、流れ込みも弱弱しい。

このままじゃダメだ。

僕はこのポイントを休ませる為にも、更に約1時間上流へ遡った。





到着したポイントは、これまであまり目立った実績を残していなかった場所。

と言うか浮き草が酷過ぎて釣りにならなかった場所だ。

だけど雨でその多くが下流に流され、更にここの水は下流よりも少し動いていた。

おまけに幸いな事に釣り人は居ない。

「出る」直感的にそう思った。





あまり広くは無いポイント、勝負は一発で決まる気がしたから1投目は少し離れた場所から足元にジョイクロシンキングモデルを通す。

しかし無反応、と言うか浅すぎてボトムコンタクトしてしまう。

2投目はフローティングに変え、メインの流れ込み手前をゆったり流す。

無反応。

そして3投目、流れ込みにダイレクトにキャストし、暫く漂わせた。

ラインスラックを取りながら自然に流す。

そして水の渦巻くところで緩くトゥイッチを入れてあげる。

その距離僅か5~10m・・・


「ドスンッ‼‼」


鋭く強烈な衝撃と共にロッドが大きく絞り込まれる‼

そして手の届きそうな距離で何度か繰り返される激しい鰓アライ‼

魚とのファイトがこれほど怖いと思った事は無かった。

9年前も同じような魚を同じような距離で掛けたんだ。

だけどその時は自分の未熟さ故とりきれずに終わった。

昨日のバラシもあったから、即座にクラッチを切り、無駄にラインにテンションをかけないよう努めた。

自分でも驚く程冷静にファイトが出来たと思う。





時折怒り狂った様に走り出すそいつをいなしながら、確実に距離を詰めた。

そして狙いを定めてフィッシュグリップを伸ばす。

下顎を掴むなり、手を振り切られそうな位暴れたが勝負あり。

フッと体から力が抜けるのがわかった。

そして何度も夢見た、確かにそこに居る怪物と繋がった事への実感がとたんに溢れ、僕は何度も小さく叫んだ。



ここまで本当に長かったよ。

目標とする120㎝まで3㎝足りない魚だったが、最早どうでも良い位かっこよく、愛しかった。





何枚か写真を撮り、でも大きすぎて上手く自分で撮る事が出来ずにいると、いいタイミングで地元の釣り人が来てくれ、一枚お願いした。



少し尾鰭が曲がってしまったけど、僕はこの写真が中々好きだ。


この後、更に大きい魚にも出会うんだ。

だけど最初の一本はやっぱり格別なんだ。

ここまで魂を震わせてくれる魚に出会えた事を心から幸せだと思う。




夜にはワニが活発になるオーストラリア。

だけどこの時はそんな事死ぬほどどうでも良かった。

この怪魚に敬意を払い、一緒に泳ぎながら蘇生させる。

十分に回復したそいつは、また力強く濁った水に消えていった。

もう今夜はこれ以上何も求めたいとは思わない。

写真を撮ってくれた釣り人に場所を譲り、釣り場を後にした。





たぶんだけど、バラマンディの成長速度を考えるとこの個体は9年前僕がここで竿を振っていた時は30㎝程の幼魚だったんだろうな。

よくも今まで食われる事無く、息絶える事無く僕に会いに来てくれたもんだ。

僕が今ここに居るのは紛れも無くこの魚が居たからで、こいつが居なけりゃ今の僕は100%存在しないだろう。

側から見ればたかが釣り、たかが一匹の魚。

だけどそれが誰かにとっての大きな夢になる事だってあるんだぜ。

またいつか会おう、死ぬほどありがとう!



 ~Tackle ~

Rod: MV-65 VALITUDO by Monster Kiss
Reel: 12Antares HG by SHIMANO
Main Line: AVANI Casting PE Max Power 78lb by VARIVAS
Leader Line: System Shock Leader 80lb by SUNLINE
Lure: Jointed Claw 178 by Gan Craft



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